出産前から若丸くんの心臓を見てくれていた小児心臓病理学のドクター(Dr. Wと呼ぶことにします)がホリデーから帰ってきた。
ここから良くも悪くも全てが始まった。
手術は今週中には予定されると伝えられ、再度心臓のエコー検査が行われた。
そしてずいぶん長い間診てくれたあとに説明してくれた内容が衝撃だった。
TGAの手術とは、簡単に説明すると大動脈と肺動脈というふたつの大きな動脈を付け替える。
しかし実はそれ以上に大変なのは、大動脈についている2本の冠動脈を、付け替わった正しい大動脈になる方へと一緒に付け替えないといけないこと。
この冠動脈というのが合併症の大半を占めるほど難儀なもので、この冠動脈の走行の仕方が手術の成功率を左右する。
ということをここにきて初めて知った。
そしてDr. Wが説明してくれたのは、若丸くんの左冠動脈の走行が超音波で見えない、もしかすると壁内走行の可能性がある、ということだった。
冠動脈の壁内走行とは、大動脈の壁に沿って走行していることをいい、これを移植することは非常に困難なんだそう。
なんといっても新生児の冠動脈は直径0.5mmしかないんだって。
TGAの中でも壁内走行は5%しかない非常にレアなケースで、この心臓センターの小児外科チーフでさえ外科医人生で数例しか執刀経験がないらしい。
Dr. Wはそれでも必ず解決策はある、と言ってくれたけど、調べれば調べるほど壁内走行の手術がどれほど困難なものであるか、手術の成功率がどんと下がること、最終的には執刀する外科医の経験・技術による、と書かれていた。
我が子を失うかもしれない
あたしたちは不安と恐怖で押しつぶされた。