生後3日目。手術の朝。
予定より2時間遅れてオペ室へ入っていった。
これから8時間かぁ、とふたりで病室に帰った瞬間、主人の携帯が鳴った。
「緊急の手術が入り、若丸くんのオペが急遽中止になったらしい。麻酔がかかってしまってて、目覚めるのに数時間かかりそう。」
えーーーーーー!!!!!!!
ショックだった。
手術が受けれなかったこともショックだったけど、まず心配したのは麻酔がかかってしまっていたこと。
すぐに心臓センターへ向かった。
あたしを乗せた車椅子を押して走る主人。
今だから笑えるけど、漫画か、というほど速い車椅子だった。
前につんのめってあたし落ちるんじゃないかっていうくらい笑。
でもそれくらい必死だった。
ICUに戻ってきてた若丸くんは人工呼吸器をつけて眠っていた。
ドクターに麻酔の影響はないのか、どれくらいで目覚めるのか、手術はいつしてもらえるのか、そんなことをとにかく必死で聞いた。
新生児というのは、自分で呼吸することを忘れるらしく、麻酔から目覚め人工呼吸器が外れるのに6時間くらいかかった。
緊急事態に陥り若丸くんの代わりに手術を受けた赤ちゃんは生死を彷徨う状態だったらしい。
疲れ切り、肩を落としてNICUに戻ってくるとき、主人が言った一言に救われた。
「ぼくたちの息子はすでにひとりの命を救ったんだよ」