生まれてすぐ若丸くんは隣の部屋に連れて行かれ、検査が行われた。
あたしはまだお腹が開いたまま出産後の抑揚感と緊張と麻酔で空中を彷徨ってるような感覚で、今しがた見た奇跡のような瞬間にぽろぽろと涙を流し続けていた。
主人が呼ばれ、若丸くんに会いに行った。
あたしの処置が終わり若丸くんのいる部屋に連れて行かれると、生まれたばかりの我が子の隣に小児科医の先生と主人が立っていた。
主人が開口一番に言った言葉は、
「DORVではないって」
だった。
え?
「TGAだけやって」
え、それっていいことやんね??
それって生まれる前よりいい診断ってことやんね??
まさか出産後の診断が良くなるとは予想も期待もしてなかったので嬉しすぎて信じられなかった。
そして初めて我が子を胸に抱いた。
小さくて温かかった。
心臓に問題があるとは思えないほど、大きくて元気な赤ちゃんだった。
ドクターがおっぱいをくわえさせるとすぐにすいはじめた。
生まれて30分ぐらいしか経ってないのに赤ちゃんっていきなりおっぱいすえるのね!
驚きだった。
ふと見るとこの部屋にもあたしのベッドを囲んでたくさんのドクターたちがいて、笑顔で(本当はマスクをしていてわからないけど笑)、母子最初の触れ合いを温かく見守ってくれていた。
隣にいたドクターは明後日か明々後日に手術になると思うよ、と言っていた。
生まれる前はDORV(両大血管右室起始症)+TGA(大血管転移症)の診断だったので、生後3〜4ヵ月での手術と言われていた。
なのでまさか生まれてすぐに手術になるとは思っていなかったけど、いい診断になったので嬉しかった。
よかった、すぐに手術してもらえるんだ、と安心できた。
でもそれは大きな早とちりで、これから手術まであたしたち夫婦は人生で最も大変な10日間を過ごすことになる。