ダイニングで仕事していたある日の午後。
「ぴんぽ〜ん」とベルが鳴り、主人がいつも通り何かに反応して駆けていく犬のようにドアまで走っていった。
「か..し..わ..ら..!つまちゃん!かしわらから!」
えーーなになに!と飛んでいき、ふたりで競争するように届いた小包を開けると。
おかあさんのお友達から素敵な手作りの本が届いた。
ふわっとあったかくなるような絵のその本は、わたしたちの結婚式の1日が描かれていて。
たくさんの思いとアイデアが形になった世界でたったひとつの本だった。
ふたりで何回も何回も読んだ。
主人は感動のあまりちょっと言葉を失ってた。
それからというもの、あたしがその本を手にとって読むときは
「つまちゃん、気をつけてね。」
となぜかいつも注意される。
そしてその小包にはおまんじゅうが入ってた。
主人はおまんじゅうがとっても好きなのです。
おまんじゅう好きなオランダ人ってめずらしいよね、と改めて思いながら仕事に戻った。
その日から毎日、
「つまちゃん、おまんじゅうたべていいですか。」
と聞いてくる。
あまりにその間隔が短いので、これはあかん全部食べられる…!
と危機感を感じ、
「あかん。」
と言ったら、一瞬止まり、
「あかん、なんですか。」
と聞かれた。
「あ、そうか、まだ「あかん」知らんかった?「あかん」は
'No, you may not eat Manjyu.'
という意味です。」
と答えると、
「えー。ごめんなさい。でもおまんじゅう、おいしいな。」
と言うので、しかたなく
「いいよ食べて。」
と言うと、にかっと笑っておまんじゅうと一緒に仕事部屋へ消えていかれました。
おまんじゅう好きなオランダ人って、めずらしいよ。ねぇ?